【感想】運動脳(アンデシュ・ハンセン)―走ることが脳を変える。精神科医が明かす運動と脳の科学

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うつ病の薬を飲む前に、まず走れ。

これは乱暴な主張ではない。スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンが、最新の神経科学の知見をもとに導いた結論だ。「運動脳」は、運動が脳にもたらす驚異的な効果を、科学的根拠とともに解き明かす一冊だ。

Contents

運動が脳をどう変えるのか

私たちの脳は、サバンナを駆け回っていた頃の設計のままだ。狩猟採集民として進化してきた人間の脳は、1日10〜15キロ歩き、時に全力で走ることを前提として作られている。ところが現代人はほとんど動かない。その「ミスマッチ」が、うつ病、不安障害、注意力の低下、認知症——現代の心の病の多くを引き起こしていると、ハンセンは言う。

運動すると何が起きるのか。脳内でBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が分泌される。これは脳の「肥料」とも呼ばれ、神経細胞を成長させ、新しい神経回路の形成を促す。特に、記憶と学習を司る海馬での新しい神経細胞の生成に、運動は劇的な効果を発揮することが研究で示されている。

ストレスと不安への最強の処方箋

うつ病に対する効果も目を見張るものがある。週3回、45分の有酸素運動を続けた群と、抗うつ薬を服用した群を比較した研究では、4ヶ月後の改善度に差がなかった。さらに1年後の再発率を調べると、運動群の方が薬物群より再発が少なかったという。

集中力と創造性への効果も興味深い。運動後は前頭前野への血流が増加し、集中力、判断力、問題解決能力が向上する。スティーブ・ジョブズが「ウォーキング・ミーティング」を愛したのは、単なる癖ではなかったのかもしれない。

集中力と記憶力を高める科学的根拠

ストレスへの対処としても運動は強力だ。運動は、ストレスホルモンのコルチゾールを消費する。もともと「肉食獣から逃げる」ために分泌されるコルチゾールは、走ることで消費されてこそ意味がある。逆に、ストレスを感じながら座ったままでいると、コルチゾールが体内に溜まり続け、慢性的なダメージをもたらす。

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