良い戦略、悪い戦略(ルメルト)|「戦略って何ですか」と聞かれて答えられるか

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「戦略」という言葉を耳にしない日はない。

経営会議でも、政治の場でも、スポーツ解説でも——「わが社の戦略は」「国家戦略として」「戦略的な布陣で」と、この言葉は至るところで飛び交っている。

しかし、「戦略って何ですか」と真顔で聞かれたら、きちんと答えられる人は何人いるだろうか。

本書『良い戦略、悪い戦略』はその問いに正面から向き合う。著者のリチャード・ルメルトは「世界で最も影響力のある経営思想家25人」に選ばれたUCLAアンダーソン校の経営学者だ。なぜなら、世の中に溢れる「戦略」のほとんどは、ルメルトに言わせれば「悪い戦略」だからだ。

Contents

「悪い戦略」とは何か

ルメルトが指摘する「悪い戦略」の特徴は四つある。

一つ目は「空虚な言葉」。耳障りのよい言葉を並べているが、具体的な意味が何もない戦略だ。「顧客志向でイノベーティブな企業を目指す」というビジョンは、誰も反対できないが、何をすべきかを何も語っていない。

二つ目は「目標を戦略と混同している」こと。「売上を3年で2倍にする」は目標であって、どうやって2倍にするかを示さない限り戦略ではない。

三つ目は「重要な問題を直視しない」こと。困難な課題を認めず、「強みを活かせば乗り越えられる」という楽観論で覆い隠す戦略は、現実から目を背けているだけだ。

四つ目は「あれもこれも目標に並べる」こと。複数の優先事項を羅列しても、どこに集中するかが不明瞭では何も達成できない。

「良い戦略」の核心——カーネル

では良い戦略とは何か。ルメルトはその核心を「カーネル(核)」と呼ぶ。

カーネルは三つの要素からなる。

まず「診断」——状況の本質的な課題を特定すること。何が問題なのかを正確に把握しなければ、正しい処方箋は書けない。

次に「基本方針」——診断を受けて、どのように問題に取り組むかの基本的な方向性。

そして「一貫した行動」——基本方針を実現するための、互いに補強し合う具体的な施策の束。

これだけ聞くと当たり前に思えるかもしれない。しかしルメルトが強調するのは、この三つが「一貫して」いること、そして何よりも「診断」の精度が良い戦略の命だということだ。

イラク戦争から学ぶ戦略の難しさ

本書はビジネスだけでなく、軍事や政治の事例も豊富に扱う。

読んでいて面白かったのがイラク戦争の分析だ。2003年のイラク侵攻における米軍の作戦——「ショック・アンド・オー(衝撃と恐怖)」——はルメルトが「良い戦略の例」として挙げる。敵の意思決定能力を麻痺させ、抵抗意志を削ぐという診断に基づいた、集中した力の行使だという。

しかし私は読みながら思った。これは「作戦」ではないか、と。「戦略」と「作戦」と「戦術」の区別が、本書を読んでもまだ完全にはわからない。

ルメルトに言わせれば、それは視点の高さの違いだろう。どのレイヤーから見るかによって、戦略・作戦・戦術は相対的に変わる。国家レベルでは戦略だったものが、軍団レベルでは作戦になる。

結局「戦略」とは、ある目的を達成するために自分がコントロールできる変数をどう組み合わせるか、という思考の枠組みなのだと私は理解した。

「戦略」を問い直す価値

本書を読んで最も印象に残ったのは、戦略の本質は「集中」にあるという指摘だ。

限られたリソースを、最も効果が出るポイントに集中投下する——これがルメルトの言う良い戦略の本質だ。逆に言えば、何かを「やらない」と決めることなしに、良い戦略はあり得ない。

「あれもこれも重要」という思考は、心理的には安心だが、戦略的には自殺行為だ。トレードオフを引き受けることが、戦略家の仕事なのだ。

バブルに浮かれることなく冷静に判断できるか。熱狂に流されず、状況を高い視点で客観的に見続けられるか。それが戦略的思考の本質だと、本書は教えてくれる。

書籍情報

タイトル:良い戦略、悪い戦略
著者:リチャード P.ルメルト
出版社:日本経済新聞出版
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