デジタルマネー戦争(房広治)|暗号・CBDC・量子コンピューター——貨幣をめぐる国家の覇権争い

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あなたは今、スマートフォンで電子マネーを使っているだろうか。

PayPayで支払い、楽天ポイントを貯め、ネットバンクで送金する——そんな日常が当たり前になった今、その裏で国家レベルの壮大な権力闘争が起きていることを、どれだけの人が意識しているだろうか。

『デジタルマネー戦争』(房広治著)は、貨幣の歴史から量子コンピューターまでを横断しながら、デジタル通貨をめぐる国家間の覇権争いを解説する一冊だ。なぜなら、お金の支配権こそが、次の世界秩序を決める鍵だからだ。

Contents

金ドル本位制の終焉から始まる物語

本書はまず、現代の通貨体制の起源から説き起こす。

1971年のニクソンショック——ドルと金の交換停止——以降、世界の通貨は「国家への信頼」だけに支えられた不換紙幣になった。ドルが基軸通貨であり続けるのは、米国の軍事力と経済力への信頼があるからだ。

しかし今、その信頼が揺らぎつつある。中国はデジタル人民元(e-CNY)を推進し、ドル支配からの脱却を目指している。ロシアはSWIFT(国際銀行間通信協会)排除への対抗としてデジタル通貨を研究する。

デジタルマネーは単なる「便利な決済手段」ではなく、地政学的な武器なのだ。

ブロックチェーンは「そんな大したものではない」

本書で著者が明快に指摘することの一つが、ブロックチェーンへの過大評価だ。

暗号通貨ブームの時代、「ブロックチェーンが世界を変える」という言説が溢れた。しかし房氏は冷静に分析する——ブロックチェーンは確かに改ざんが難しい分散台帳技術だが、現状では処理速度が遅く、エネルギー消費が膨大で、スケーラビリティに課題がある。

ビットコインはブロックチェーンの一実装に過ぎず、「ブロックチェーン=革命的技術」という単純な図式は過度に楽観的だ。

一方で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の文脈では、必ずしもブロックチェーンを必要とせず、より効率的な中央集権型のデジタル台帳で十分だという議論もある。

量子コンピューターがマイナンバーを脅かす

本書で最も衝撃的だったのが、量子コンピューターとセキュリティの関係だ。

現在のデジタルセキュリティは、素因数分解の計算困難性を利用したRSA暗号などに依存している。しかし量子コンピューターが実用化されれば、これらの暗号が数秒で解読される可能性がある。

マイナンバーカード、オンラインバンキング、電子政府——現代のデジタルインフラすべてのセキュリティが根底から崩れかねない。量子コンピューターの実用化は「もしも」の話ではなく、時間の問題だ。

これへの対応として「耐量子暗号(ポスト量子暗号)」の研究が世界中で進んでいるが、日本の取り組みは遅れていると著者は指摘する。

日本人の天才、日下部進とFelica

読んでいて嬉しくなったのが、日本人の天才エンジニアへの言及だ。

日下部進氏(ソニー出身)は、世界標準となった近距離無線通信技術「FeliCa」の開発に関わった人物だ。Suicaやnanacoなど日本の電子マネーの基盤技術として、世界に誇れる日本発のイノベーションだ。

一方で著者は、日本がなぜグローバルなデジタル通貨競争でイニシアチブを取れていないのかという問いを提起する。FeliCaという優れた技術があっても、それを国際標準に育てる力が日本には弱かった。

この問いへの答えは、本書だけでは見つからなかった。しかしその問いを抱えること自体に、大きな価値があると感じた。

デジタルマネーは「誰の手に」握られるか

本書を読んで感じたのは、デジタルマネーの普及は私たちの自由とプライバシーにも深く関わるという問題意識だ。

中国のデジタル人民元は、購買履歴が政府に完全に把握できる設計になっている。「監視資本主義」ならぬ「監視通貨」の世界だ。これが世界標準になれば、経済的なプライバシーは消滅する。

一方で民主主義国家のCBDCはどうあるべきか——日本銀行も研究を続けているが、技術の選択は価値観の選択でもある。

書籍情報

タイトル:デジタルマネー戦争
著者:房 広治
出版社:フォレスト出版
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