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『薬屋のひとりごと』ビッグガンガンコミックス版(作画:ねこクラゲ、構成:七緒一綺)の第4巻には、第十五話から第二十一話までの全7話が収録されています。3巻より1話多い構成で、後宮で起きた毒殺未遂事件の決着と、猫猫〈マオマオ〉自身の身の上が大きく動く展開が同居する巻です。
なお本作には漫画版が2系統あり、この記事で扱うのはスクウェア・エニックスのビッグガンガンコミックス版です。サンデーGX版『猫猫の後宮謎解き手帳』とは収録内容も巻数の進み方も異なります。
Contents
薬屋のひとりごと4巻の見どころ3つ
4巻の中心にあるのは、里樹妃〈リーシュひ〉が毒を盛られかけた一件の真相です。壬氏〈ジンシ〉のもとには、犯人は阿多妃〈アードゥオひ〉の侍女頭・風明〈フォンミン〉だという報告が届いていました。柘榴宮へ手伝いに向かった猫猫は、そこに大量の蜂蜜があること、風明の実家が養蜂を営んでいることを知ります。里樹妃が蜂蜜を苦手としていた理由と、阿多妃の子が亡くなった経緯が結びついたとき、風明が里樹妃に毒を盛った理由が見えてきます。
もう一つの軸は、猫猫自身の身の上です。風明の実家と取引のあった家に連なる女官が大量に解雇されることになり、猫猫の書類上の実家もその対象でした。花街に戻れば妓女にされてしまう——だから後宮に残してほしいと壬氏に頼むのですが、壬氏はその真意を取り違えて猫猫を解雇してしまいます。すれ違ったまま花街へ帰った猫猫を、壬氏がどう迎えに行くのか。4巻の後半はここに向かって進みます。
3つめは、猫猫の養父をめぐる情報が一気に開くところです。阿多妃の出産に関する記録の中に、猫猫が「おやじ」と呼んできた人物——羅門〈ルオメン〉の名が記されていました。ここで初めてその名が示され、花街にいる「おやじ」としてしか語られてこなかった人物が、かつて後宮に深く関わる立場にいたことがわかります。加えて、後宮を去る阿多妃を見送りながら猫猫がふと思い描く空想は、この作品がまだ明かしていない大きな謎の輪郭をなぞるものになっています。
4巻の名セリフ2選
1つめは第十六話、猫猫の独白から「なにやってんだよ おやじ」。阿多妃の出産に関する記録をめくっていた猫猫が、そこに養父の名を見つけてしまう場面です。花街にいるはずの「おやじ」が、なぜ後宮の記録に名を残しているのか。ぼやくような短い一言ですが、ここから猫猫は、知らずにいた養父の過去と向き合うことになります。
2つめは第十九話、高順〈ガオシュン〉の独白から「代替がダメなら本物を用意するしかないか」。猫猫を解雇したあと、目に見えて調子を落としていく壬氏を横で見ていての一言です。壬氏本人ではなく付き人の視点から状況が語られることで、壬氏が何を失ったのかがかえってはっきり伝わってきます。第二十話への助走にあたる場面でもあります。
4巻の収録話一覧
・第十五話 猫猫への依頼
・第十六話 蜂蜜 その①
・第十七話 蜂蜜 その②
・第十八話 阿多妃
・第十九話 すれ違い
・第二十話 宦官と妓女
・第二十一話 荷造り
「蜂蜜」が2話構成になっているとおり、前半4話が事件編、後半3話が猫猫の身辺の話という配分です。全7話で193ページ(次回予告を含む)と、収録話数のわりに1話あたりが短めに感じられる巻でもあります。
4巻で名前がわかるキャラクター
・風明〈フォンミン〉……阿多妃の侍女頭。実家は養蜂を営んでいる
・羅門〈ルオメン〉……猫猫の養父。かつて阿多妃の出産を担当した医官
・梅梅〈メイメイ〉……緑青館の三姫の一人
・女華〈ジョカ〉……緑青館の三姫の一人
緑青館の三姫は、3巻で名前が出た白鈴〈パイリン〉に梅梅・女華が加わって顔ぶれが揃いました。そして4巻でいちばん大きいのは、これまで「おやじ」としか呼ばれてこなかった猫猫の養父に、羅門という名が与えられたことです。名前が出た瞬間に、それまで背景だった人物が物語の中心線へ引き寄せられる——薬屋のひとりごとらしい進み方だと思います。
アニメではどこまで?
4巻の内容は、アニメ1期の第9話後半から第13話の冒頭にあたります。おおまかな対応は、第十五話・第十六話が第10話「蜂蜜」、第十七話・第十八話が第11話「二つを一つに」、第十九話・第二十話が第1クール最終話の第12話、第二十一話が第13話「外廷勤務」の冒頭という並びです。なお第12話には、漫画の第二十話とまったく同じサブタイトルが付けられています。アニメは小説を原作としているため漫画とは話の区切りが一致しませんが、4巻は比較的きれいに対応している範囲だといえます。
薬屋のひとりごと4巻を読む
4巻は2019年2月に初版が出て以来、版を重ね続けている巻です。電子版はKindleとDMMブックスの両方で配信されています。
前後の巻・総まとめ
まとめ
4巻は、後宮の事件を解くことで猫猫が後宮にいられなくなるという、皮肉なつくりの巻でした。風明の動機が明かされる第十七話までが謎解きの山場で、そこから先は猫猫と壬氏の距離が一度大きく開いて、また縮まるまでが描かれます。羅門の名前が出たこと、そして阿多妃をめぐって猫猫が抱いた空想が、この先どこへつながるのか。読み終えたあとに気になる要素が多く残る巻です。


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